放射輸送方程式の導出

放射輸送方程式とは

ざっくり言うと放射輸送方程式とは、天体からの放射( \simeqエネルギー)がどのように運ばれて、自分たちの元へ飛んでくるのかを表す方程式です。放射は、輻射とも言います。

 

放射輸送方程式の導出

f:id:r1ngne:20190522123040p:plain

分子雲における放射と吸収

上図を見てください。宇宙空間には分子雲と呼ばれる気体の塊が存在しており、上図の雲のイラストはそれを模したものです(実際には、このような雲の形ではありませんが…笑)。中身の気体には様々な種類がありますが、その多くは水素(\rm H_2)で、他に二酸化炭素\rm CO_2などがあります。 

 

ある天体の放射は、地球に届くまでにこのような分子雲などを通過してくることになるのですが、その過程で分子雲内の気体からの影響を受けてしまいます。「これでは天体の放射の情報を得られないじゃないか!」と思うかもしれませんが、分子雲の「影響」を見ることで、逆に分子雲の情報を得ることができます。これをやるための放射輸送方程式です。

 

じゃあその「影響」とはなんなのか。それは天体の放射が分子雲内の気体によって吸収されることと、逆に気体が放射を行うことの2種類があります。ここでは、気体が放射を吸い取ったり加えたりすると思っておいてください。

 

では少しずつ、方程式の導出をしていきます。と言っても、準備をしてしまえば式自体はすぐに出てきます。上の図を見ながら考えると、少しはわかりやすいかと思います。

 

地球に向けられた方向にx軸を考えます。そして、位置xにおける放射強度、つまり放射の大きさをI_\nu(x)で表します。これが天体からの放射というやつです。多くの場合は特定の天体の放射を考えるわけではなく、「宇宙背景放射」というものを想定します。そして、分子雲内の気体の吸収と放射の程度を、吸収係数\kappa_\nu(x)と放射係数\varepsilon_\nu(x)によって表します。これらが、分子雲の「影響」の大きさです。dxという短い距離を考えた時に、放射がdI_\nu(x)だけ変化したとすると

 

\begin{align}
dI_\nu(x)=-\kappa_\nu(x)I_\nu(x)dx+\varepsilon_\nu(x)dx
\end{align}

 

となります。右辺の符号は、吸収されたら減るから-、放射が加えられたら増えるから+と考えて良いです。この式の両辺をdxで割ると放射輸送方程式を得ます。

 

\begin{align}
\frac{dI_\nu(x)}{dx}=-\kappa_\nu(x)I_\nu(x)+\varepsilon_\nu(x)]
\end{align}